コメント  

すばらしい感性と色彩感覚。どの映像にも死を感じる。
でも死のなかに生命が宿っている。

― 田口 ランディ (作家)


肝心なものはひとつも映らない。しかし、この「撮れなかった」
ことの空白感が、この作品を瑞瑞しく際立たせている。

― 佐藤 真 (映画監督)


輪廻という真相を描いたというよりも、輪廻への切ない幻想を描いた作品だ。
この叙情性はただものじゃない。

― 森 達也 (ドキュメンタリー作家)


目の前に起きたことを受け入れていくという態度は、母から受け継いだものなのか、この作家が撮るときに見つけた態度なのか?僕には良くわからない。ただ、その同質の視線の交叉がこの作品のある種の品をその日常描写に与えていることは間違いないと思う。諦観と呼んでしまうと、せっかくこの作品にあふれている女3人のお茶目なところが伝わらなくなってしまうので厭なのだが、この作品を観て、日本人はというか人間はこうやって生きてきたし、これからも生きていくんだなぁと、しみじみ思った。

― 是枝 裕和 (映画監督)




  批評  

「現実から排除することの危険性」
クリス フジワラ(評論家・2005年山形国際ドキュメンタリー映画祭審査員)
「チーズとうじ虫」は、多くのドキュメンタリー映画同様、監督自身が登場人物として関わっている。そのため制作者は、どのように自身を表現すべきか、また、映画の中でほかの要素を台無しにすることなく一人の人間を描き出すにはどうしたらよいか、という問題に直面する。そして、慣習や良識、倫理など・・・

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「1人称のカメラワークドキュメンタリーの成果」
渡辺哲也(映像演出家)
母と祖母、そして作者。女ばかり三世代三人暮らしの作者が、癌の母を看取るまでのおよそ5年あまりの記録。いくつものエピソードが章立てられ、時系列に沿って展開する。作者は手持ちカメラで、日常の、そして病院の母を撮り続ける。それが作者のこだわるこの映画のルールだ。何故なら、カメラが写し撮る・・・

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  受賞コメント  

・2005年山形国際ドキュメンタリー映画祭
 小川紳介賞 審査員:村山匡一郎、ピンパカ・トゥイラ

「母親の死と向かい合った個人映画であるが、センチメンタルな感傷に陥ることなく対象との距離を保ちながら作品を巧みに構築しているのは素晴らしい。ポエムのように紡ぎだされた言葉と映像との組み合わせが見る者の視線を膨らませ、作者と対象との関係を超えた映画的な世界が紡ぎだされていく様は、初々しい新鮮な印象をもたらしてくれる。肉親の死という誰もが感傷的にならざるをえないにもかかわらず、感動は作品世界そのものから生み出される」


・国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞

「『チーズとうじ虫』は多くの理由により印象深い作品だ。最も力強い感動を与え、心動かされないでは見れない映画である。加えて監督は、感性、スキルや知性で、記憶や心象、人生における芸術作品の場所についての大切な言葉を作り出している」


・2005年ナント三大陸映画祭ドキュメンタリー部門 金の気球賞
 Ouest france紙

「ナントの映画祭では、ドキュメンタリー部門の質の良さが話題になった。ここでは、受賞した日本の『チーズとウジ虫』について言及が必要だ。
日本の若い監督である加藤治代の作品は、親密な関係が各シーンで見事に打ち立てられていると同時に、監督の美しさに対するこだわりが際立っている。この作品は賛美歌であり、苦しみとともに映像の側に立ち、人生へ戦いを挑む作品である。消え行く母への愛情を描くとともに、ヒマワリの開花や空の美しさなどを通じて、巡る季節を謳歌している。まるでじょうろで水を与えられるかのように、この受賞作は大いなる安らぎを与えてくれる」


・山形新聞
 斎藤敦子(国際批評家連盟賞審査員)

「私たちが国際批評家連盟賞に選んだ加藤治代の『チーズとうじ虫』は、今年の映画祭の収穫の1本だった。歴史学者カルロ・ギンズブルグの著作名を冠した『チーズとうじ虫』は、癌で余命1、2年と宣告された母親の日常を娘の立場から映したものだ。しかし、ただの闘病記ではない。この映画で最も特徴的なのは"涙の欠如"だった。家でも病院でも葬式でも、誰も泣かない。涙の場面は一カットも出てこない。この作品は昨今流行の涙を大盤振る舞いする安易なメロドラマの行き方とは対極にあるのだ。
愛する者を失った痛みを涙などで表現しきれるはずはない。涙は時間がたてば乾くが、痛みは乾かないのだから。母親の死と喪失は、加藤治代というカオスの中で、ゆっくりと発酵され、ありふれた日常の透明な時間として再構築される。どの場面―家庭菜園を耕す母親、道端のコスモス、コンポストいっぱいに湧いたうじ虫―をとってみても、発酵の過程を経た、上等な上澄みになっていて、涙などという記号的な表現では適うはずもない、痛切な悲しみに満ちていた」

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2005年山形国際ドキュメンタリー映画際・小川伸介賞・国際映画批評家連盟賞 受賞     
2005年ナント三大陸映画祭ドキュメンタリー部門最高賞(金の気球賞) 受賞
     
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