ものがたり  
母親の看病のために故郷に帰ってきた加藤治代は、母親の病気が治る奇跡を信じ、撮影を始めます。そこでカメラに収められたのは、限られた命を精一杯生きる母と、高齢の祖母と何気ない日常風景でした。母親の死後、肝心なものがなにひとつ撮れなかったという空白感から、思い出を辿る祖母と自身の心情を記録していきます。


  「チーズとうじ虫」とは  
”私が考え信じているのは、すべてはカオスである、すなわち、土、空気、水、火、などこれらの全体はカオスである。この全体は次第に塊になっていった。ちょうど牛乳のなかからチーズの塊ができ、そこからうじ虫があらわれてくるように、このうじ虫のように出現してくるものが天使たちなのだ。

―メノッキオ”

―「チーズとうじ虫」カルロ・ギンズブルグ著 杉山光信訳 みすず書房

カルロ・ギンズブルグ著「チーズとうじ虫」について
イタリア出身の歴史家、カルロ・ギンズブルグが著した歴史書。現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で教える。著書に『ベナンダンティ―16-17世紀における悪魔崇拝と農耕儀礼』『夜の合戦―16~17世紀の魔術と農耕信仰』などがある。『チーズとうじ虫』の執筆に当たっては、古文書館の闇の中から、一介の粉挽き屋の生きたミクロコスモスを復元することに成功。農民のラディカリズムの伝統の中に息づく古くかつ新しい世界・生き方を伝えている。

メノッキオは、16世紀のイタリア・フリウリ地方に住む粉挽き屋。チーズからうじ虫が沸くという農民の生活実感を共有しつつも、そこに留めず、上記の言葉を以って、ローマ協会の協議である神による「無からの創造」に対置した。その異端のコスモロジー論は教皇庁から告訴され、カトリック側の対抗宗教改革の最盛期にあって、異端として抑圧されることとなる。結果、ニ度の裁判を経て焚刑にされた。

加藤治代監督の『チーズとうじ虫』は、本書とは直接関係はないが、本作の制作過程において、上記のメノッキオの言葉が、母親の病気を受け入れようと苦悩する加藤治代にインスピレーションを与えたため、タイトルとして用いられた。

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2005年山形国際ドキュメンタリー映画際・小川伸介賞・国際映画批評家連盟賞 受賞     
2005年ナント三大陸映画祭ドキュメンタリー部門最高賞(金の気球賞) 受賞
     
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